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個人でやっているポケ☆ダンの擬人化二次創作です。
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ep3-時空の叫び




お決まりのドゴームの声で目が覚め、朝礼をこなす。
眠い目を擦り、欠伸を噛み締める。
現在、全くと言っていいほど記憶が戻らん。
まぁ、生活に支障はないからいいんだけど。
そして皆が持ち場に行き始めたとき、ぺラップに呼び止められた。

「オマエ達、今日はこっちの仕事をやってもらうぞ!」

そうして連れて行かれた先はこの前とは違う掲示板。
「あれ・・・?前はあっちの仕事じゃ・・・」
「そうだ♪今日はこっちの仕事をやってもらうよ♪」
違いが分からずに俺は首を傾げる。
見た感じはそんなに大差はない。
砂月も同じ事を思っていたらしい。
「あっちの掲示板とはどう違うの?」
「よく見てみろ♪」
見ればそういえば写真が貼られているような。
どいつもこいつもどこか悪さを感じる。
まぁ、それもピンからキリって感じだけどな。
俺はなんとなくこの掲示板の意味が分かった。
だが、砂月は違ったらしい。

「皆カッコイイね!有名な探険家とか?」

俺は思わずこける。
どこをどう見ればカッコイイと言う判断になるのか。
ぺラップも同じらしく脱力している。
「ここのは全部・・・お尋ね者だ。悪い事して指名手配されてるんだ」
その言葉に砂月が固まる。
まぁ、無理もないだろう。まさか、カッコイイと言ったのがお尋ね者なんだから。
それを考えると、少し笑い話に近いな、と思う。
「賞金掛けられてるんだろ?お、結構良い値段・・・」
「でも凶悪な奴が多いから、皆手を焼いてるんだ・・・」
溜め息をつき、写真を眺めている。
警察はどうなっているんだろうか・・・思わず考えた。
だが、多分ここのは警察が手を煩わすほどの奴ではないか、手に負えないの両極端なんだろう。
「まさかコレを私たちに捕ま・・・そんなの無理だよ!!」
砂月が青い顔をして、首を左右にぶんぶん回す。
気持ちは分からなくもない。
今まで一般人だった奴に捕まえろとか・・・無謀に近いだろ。

「はははは♪冗談だよ、ジョーダン♪」

砂月の様子を見て、ぺラップが笑いながら言う。
その言葉を聞いて、砂月が目を丸くする。
「え?冗談・・・」
「悪いって言っても、極悪人からコソ泥とピンキリさ♪お前達に極悪人を連れてこいとか頼めるわけないだろ?」
そう言ってまた笑う。
まぁ、連れてこいとか言われても困るが、今の言葉に少しムカッときた。
絶対にもっと強くなって、何人でも捕まえてやる。
「まぁこの中から弱そうな奴を選んでくれ♪」
「でも・・・悪人なんだよね・・・やっぱり私怖くて戦えないよう・・・」
砂月が肩を落として弱々しい声で言う。
俺個人としては、手配されてる奴の中に可愛い顔した奴がいるほうが気になるが。
まぁ、落ち込まれたままじゃ嫌なので、慣れない励ましをしよう。

「安心しろ。いざとなったら、逃げて強くなってリベンジすればいい」

「伊佐那・・・」
やっぱり、慣れてないせいかとても恥ずかしい。
顔から湯気が出そうだ。
無理せずに黙ったままでいれば良かった・・・
いつも人を励ます奴をこの時だけは、少し尊敬する。
「まぁ、戦うと言っても準備が必要だからな♪ちゃんと街とかで準備して来い」
そう言われ、俺達は街やギルドの中を散策する事にした。


砂月が街について詳しく教えてくれる。
その道中、初めて会う奴には挨拶や自己紹介などをした。
明るい太陽が広場の活気を増やす。
「あ、私カクレオンの店に行きたいな!色んな道具が売ってあるの」
そして二人でカクレオンの店に行く。
行けば、そこにはカクレオンの二匹と小さなマリルとルリリの兄弟。
和やかに会話をしており、カクレオンから買い物袋を貰うと二匹は帰っていった。
「まいど~!いつも偉いねぇ・・・」
「あの二匹が?なんで?」
「おや!?・・・どちらさん?ヒノアラシなんて珍しいねぇ」
カクレオンの二匹が物珍しそうに俺を見る。
まぁ、確かに砂月達も珍しいと言ってたし仕方ないのかもな。
「こっちのヒノアラシは伊佐那!私達、探検隊始めたの!!」
砂月が嬉しそうに言う。
それにカクレオン達は良かったねぇ、と砂月に祝いの言葉を贈る。
「で?さっきの二人がなんで偉いんだ?」
するとカクレオンの二匹が涙とハンカチ付きで話し始めた。

なんでも具合の悪くなった母の代わりに、買い物とかをしている兄弟らしい。
確かにあんなに小さいのに、母の代わりを務めるのは大変だろう。
さすがに涙は出ないが、今度会ったら優しくしてやろうかな、と考える。
まぁ、ガラじゃないけどな。
砂月はカクレオンにつられて涙を流している。
・・・皆、良い奴らばっかだなぁ。

すると兄弟が慌てて店先に戻ってきた。
「カクレオンさ~ん!」
「リンゴ一つ多いです!」
それくらいがめとけば良いのに。なんて律儀な。
こんな純真で素直な奴等を見ると、ああ俺汚れてんなぁと感じてしまう。
俺どれだけ駄目な人間なんだろうか。
「ああ。それは私からのオマケだよ。二匹で仲良く食べるんだよ」
「ホント!?」
「わーい!ありがとうカクレオンさん!!」
嬉しそうに二匹ははしゃいでカクレオンにお礼を言う。
・・・こういう奴らなら無償で助けてやっても良いかな。
じゃないと、俺の心が珍しく痛みそうで。
「気をつけて帰るんだよ~」
「はーい!イテッ」
気をつけて帰れと言われた矢先に、弟であろうルリリが転ぶ。
その手からリンゴが転がり落ちて俺の脚先に当たる。
俺はそれをかがんで手に取る。そして起き上がるリルルの前に差し出す。
「あ、ありがとうございます!」
ルリリはリンゴを手に取る。
そのとき微かにルリリの手が俺に触れた。






頭の中がグラついて、目眩で目の前が見えなくなる。







(なんだ!?)
鐘が鳴り響くように俺の頭の中をかき乱す。
テレビの砂嵐の中に放り投げられたような気分だ。
そう思っていると、声が頭の中を過ぎ去った。


た・・・・・助けて!!


(助け・・・誰が・・・ルリリ・・・か?)
切れそうになる思考を繋ぎ合わせていると、ルリリが話しかけてきた。
「?どうかしましたか?」
「おーい、ルリリ!どうしたんだ、早く来いよ!」
「あ、うん!今行くよお兄ちゃん!リンゴありがとうございました」
慌ててルリリはお礼を言うと、兄のとこへ行ってしまった。
するとマリルが弟に言い聞かせるように言う。
「買い物も終わったし、あとは落し物だけだな」
「うん!」
そして二人の姿は見えないところまで遠ざかってしまった。


「フフ。可愛いね、あの二匹」
微笑ましそうに砂月が言う。
しかし俺は先程の事が頭から離れない。
そんな俺の様子が気になったらしい。
「伊佐那、どうしたの?」
「さっき、助けてと言う声が聞こえなかったか?」
「え!?私は何も・・・カクレオンとかは何か聞こえた?」
砂月がカクレオン達に聞くが、二匹は首を横に振る。
それに俺の顔が険しくなるのを感じた。
それじゃあ、俺が聞いた声は一体・・・
「気のせいじゃない?」
砂月は労わるように俺に言う。
しかし、俺には気のせいには思えなかった。
そしてもう一回思い出して、確信する。

あれは確かにルリリの声だった。

「なにボーっとしてるの?買い物早く終わらせちゃおう!」
そう言って砂月は店先に並んでる道具を見る。
俺も今だけはさっきのことを忘れて、道具を品定めする。


数分後のカクレオンと俺の値切り合戦で、俺は完璧に声の事を忘れた。




ある程度買い物を終わらせ、広場を適当に歩いてた。
そこで少し遠い所に先程の兄弟とスリープが喋っていた。
「あ、あれは・・・」
砂月も気付いたらしく、声を上げる。
俺は耳を澄まして、三匹の会話を盗み取る。
「わ~い!」
「ありがとうございます!!」
「いやいやお安い御用だよ」
なにやら兄弟はスリープにお礼を言っている。
意味が分からないんで、砂月と一緒に三匹のもとへと近付いていく。
「どうしたの?」
「あ!さっきのお姉さん」
「僕達・・・前に大切な物を落としちゃって・・・探しても中々見つからなくて・・・」
マリルが落ち込みながら、段々小声で話していく。
どうやら相当大切なものらしい。
だがすぐにマリルは明るい声で話を続ける。

「けど!このスリープさんが見たことがあるって、一緒に探してくれると言ったんです!!」

ルリリも兄と一緒に大喜びではしゃぐ。
なんとなく、話の都合が良すぎると感じるのは俺の気のせいか。
「僕達、もう嬉しくって!!」
「それは良かったね!!」
砂月が兄弟たちと同じ様に嬉しそうな笑顔を見せる。
ここまで親身になれる事は俺には出来ないから、思わず感心してしまう。
「本当にありがとう、スリープさん!」
「君達みたいな幼い子が困っているのはほっとけないですよ。さぁ、探しに行きましょう」
そして兄弟二匹を連れて行こうと歩くスリープ。
俺は特に何もせずに見ていたら、スリープと肩がぶつかってしまった。
「おっと。これは失礼」





また目眩に襲われる





(またかよ・・・これは・・・一体?)
その場を去ったスリープ達を見て、砂月は微笑ましそうにしている。
俺の様子には気付いていないらしい。
「スリープさんって親切だね!世の中悪いポケモンとか増えてるのに・・・凄いなぁ」
砂月の言葉が俺には途切れて、上手く聞こえない。
今度は目の前も霞んで、テレビの砂嵐のような映像が流れ込んでくる。
その砂嵐が薄れてきた時、チャンネルが合ったように映像と音声が突如脳に入ってくる。


言うことを聞かないと痛い目見せるぞ!


た・・・・・助けて!!


(あの野郎!?ルリリが・・・危ねぇ!!)
「落し物見つかるといいね・・・って、どうしたの?深刻そうな顔をして」
俺の変な状態に気付いた砂月が俺を心配する。
そんな砂月に先程の事を話してみる。
「え!?それは大変・・・なのはそうなんだけど・・・いや、別に伊佐那の事を信じていないと言う訳じゃなくて」
「まぁ、俺自身も半信半疑だから断定できねぇけど・・・あのスリープ、引っ掛かるんだよな」
「私は・・・親切そうに見えたけど・・・うーん・・・」
砂月が頭を抱えて、どうしようかと悩んでいる。
俺の言葉を信じてくれてるとはいえ、この姿を見ているのは少し心苦しい。
それにあの映像はなんの証拠にもならないしな。
「いや・・・やっぱ気のせいかも。俺疲れてるみたいだし」
俺の言葉を聞いた砂月は、大丈夫かと言う顔で俺を見上げてくる。
そこで少し慣れない笑顔を作る。
効果は抜群だったらしい。相当疲れてると思われたようだ。
「じゃあ、ギルドに戻ってゆっくり休もう!」
そして二匹でギルドに帰る事にした。
でも俺の頭の中であの映像が消える事はなかった。


帰って少し休んだ後、ビッパを呼んで掲示板を一緒に見てもらう事にした。
ビッパは嬉しそうに掲示板の紙を眺めていく。
頼りにされたのが相当嬉しいらしい。
「こ、怖そうなのは選ばないでね!!」
砂月が慌てて付け足す。
「分かってるでゲスよ。え~と・・・」
そこで警報みたいに声が鳴り響いた。


「新しい情報を更新します!危ないのでさがって下さい!!」


何だと思い、掲示板に近づいてみる。
ビッパが俺を注意しようと口を開きかけた所で、掲示板の板が回転。
その際、俺は回転した板の角に頭をぶつけ、後ろに吹き飛ばされた。
滅茶苦茶に痛い。頭を触ってみれば血が流れてた。
「あ~・・・なんだ、コレ?」
「伊佐那!?包帯、包帯!!」
砂月が包帯を取り出して、俺の頭にグルグルと巻きつけていく。
不器用なのか、大雑把なのか・・・とにかく酷い巻き方だ。
掲示板は今は裏の部分を見せている。
「もー、危ないから近付いちゃ駄目でゲスよ!」
「ふ~ん、なんで回転するんだ?」
「ダグトリオと言うポケモンが情報を更新するために、板を裏返しているんでゲスよ」
そういえば耳を澄ませば、紙が剥がれる音と貼り付ける音が聞こえる。
ビッパが更に詳しく説明してくれる。
「地味だけど重要な役割でゲス!彼らはこの仕事に誇りを持っているでゲスよ!」
まぁ、確かに情報が古いままだと色んな混乱が起こるだろう。
重要なのだろう、いなくなったら・・・結構ヤバイ事起きそうだな。


「更新終了!危ないのでさがってて下さい!!特にさっきのヒノアラシ!!」


最後の方は少し怒りが混じっていた。
今度からなるべく気をつけるようにしよう。
「あ、終わったみたい・・・!?」
砂月の顔が険しくなった。
俺も新しい情報である一枚の紙を見つけ、眉間に皺を寄せる。
「どうしたんでゲスか?新しいお尋ね者情報に何か・・・」
全く、笑えない冗談っていうのも日常に転がっているもんだ。
俺はもうちょっとあの野郎に警戒しとけば良かったと、今更ながら後悔する。
きっと砂月も同じ心境なんだろう。

お尋ね者スリープ・・・本当に笑えない冗談だ

俺達は首を傾げるビッパを無視して、ポケモン広場へと走っていく。
後ろの方でピッバの呼ぶ声がするが、気にして入られなかった。




マリル兄弟を探していれば、広場の真ん中で困っているマリルを発見した。
砂月が近付き、声をかける。
「マリル、どうしたの?ルリリやスリープは!?」
「それが落し物探してたら・・・スリープさんいつの間にかルリリを連れて行っちゃったらしくて・・・」
今にも泣きそうな顔でマリルが喋る。
どうやらまだスリープの事を詳しく知らないらしい。
「どうしよう・・・呼んでも戻ってこないし・・・ルリリに何かあったら・・・」
想像して怖くなったのだろう、砂月の胸の中に飛び込み泣き始めた。
・・・この場でこう考えるのもなんだが・・・羨ましい。
とりあえずマリルをなだめ、二匹の行方を聞く。

目の前に広がる山はトゲトゲ山。
まだ来たことはないが、見覚えがあった。
頭の中で流れた映像、そこに写っていた岩肌と似ている岩が目の前にある。
砂月がマリルに改めて確認している。
「ここでルリリとスリープがいなくなったんだね?」
「はい・・・」
マリルは弱々しくも、しっかりと頷く。
砂月が俺の方を見て言う。
「伊佐那が言っていた所は、ここと似ている?」
「ああ。ほぼ間違いねぇ」
「じゃあ、行こう!!早くルリリを助けにいかなきゃ!!」
マリルに警察を呼ぶように頼み、俺たちは山の中へと入り込んでいった。


奥まで来たルリリは行き止まりである事に首を傾げる。
「あれ?スリープさん、落し物は?」
スリープは人の良さそうな笑顔を崩さずに告げる。
「残念だけど、ここに落し物なんかないよ」
スリープの言葉にルリリは驚きとショックを同時に受ける。
「お兄ちゃんは!?お兄ちゃんも後で来るんでしょ!?」
「お兄ちゃんもここには来ない・・・俺はお前を騙していたんだよ!!」
先程の笑顔が見る見るうちに凶悪になっていく。
まさに悪党と呼ぶに相応しい小賢しい笑顔だ。

「それより頼みがあるんだ。お前の後ろにある小さな穴にある盗賊団が隠した財宝があるといわれてるんだ」

ルリリは言われた穴の方を見る。
確かに小さく、体が小さいポケモンでも少し窮屈そうな穴だ。
「俺には体が大きすぎて無理だが・・・お前ならできるだろ?小さなお前なら」
そしてルリリに近付いていく。
「大丈夫、ちゃんとやってくれればお前を無事に元の場所に帰してやる・・・だから、行け!!」
「お、お兄ちゃーーーん!!」
怖くなったルリリがスリープから逃げようと走り回る。
それをスリープは慌てて追いかける。

「言うことを聞かないと痛い目見せるぞ!」


「た・・・・・助けて!!」



そこに場に合わない無遠慮な俺の声。
「はい、ゴメンよー!ちょいっと退いた、退いた!!」
トゲトゲ山の奥付近の入口で、俺が向かってきた奴を蹴り倒す。
砂月も同じ様に相手を倒す。
中々の強敵揃いで、俺達は満身創痍である。
「ったくよー、誘拐って言うから身代金かと思えば・・・スリープ、お前器ちいせぇな」
呆然としてるスリープとルリリ。
どうやら俺達の登場に驚いているらしい。
「見つけたぞ、スリープ!!ルリリを返せ!!」
砂月が威勢よく言う。
スリープが少したじろく。
「お、お前達は!?」
「私達は探検隊ハーメルン!!」
「大人しくお縄についてもらおうか?最小悪党」
最初は少し怯えた表情をしていたスリープが急に微笑む。
まぁ、なんとも悪そうな顔だが迫力が足りん、俺的にはもう少し唇を吊り上げた方が良いと思う。
しかし、なんで急に微笑んだ?

「そっちの奴・・・震えてんぞ?お前達新米なんだろ?だから俺が怖いんだな」

指摘されたとおり、俺の隣にいる砂月が少し逃げ腰で震えていた。
多分、初めて犯罪者と向かい合ったんだろう。
「うう・・・怖くない、怖くない」
「さて、新米が俺みたいな犯罪者を捕まえられるかな!?」
砂月の様子を見て、スリープは自信を取り戻したらしい。
なんとまぁ、単純な。
「や、やってやる!!私は探検隊なんだもん!!」
「ははは!こんな弱そうな探検隊は初めて見たぞ!!俺が倒せるかどうか・・・見せてもらおうか!?」


「じゃ、遠慮なく」


高笑いして、攻撃態勢もロクに整っていないスリープの顔を蹴り、踏みつける。
足の裏でスリープが驚きと苦しさと痛みでもがいている。
「ん?どうした?倒せるかどうか・・・見るんじゃないのか?あ・く・と・う・さんよぉ・・・」
そのまま砂月やルリリに分からない程度に踏み躙る。
すると、急に体が浮いて岩肌へと吹き飛ばされた。
エスパーの名は伊達じゃないらしい。
「こ、小僧めが~!!」
相当切れてるらしく、俺めがけて突進してくる。
あの体でぶつかられたら痛そうだな、呑気に考えている間にも迫ってくる。
俺は岩肌にぶつかったさい、腰を強かに打って動けなかった。
すると、横から砂月がこちらが怖くなるくらいの気合を纏ってスリープに攻撃を仕掛けた。
「ていやぁあああああああああ!!」
遠心力と突進するスピードを利用した回し蹴り。
さすがにあんなキツイのをくらって、吹き飛ばされないのはいないだろう。
スリープは蹴られた方向の岩肌にぶつかり、そのまま動かなくなった。
・・・やっぱり、思うんだが砂月は強すぎると思う。
態度だけが弱いだけで、別に大抵は平気だと思うんだが。
意外とあっけなく勝負はついてしまった。



泣いて抱きついてくるルリリをなだめる砂月を背景に、俺はスリープへと近付いていく。
いくら砂月の蹴りが強かったとはいえ、気絶するほど弱いとは思えなかった。
案の定、何とか体を動かそうと必死になっていた。
「うう・・・くそ、新米風情が・・・」
「・・・出せ」
「は?」
俺の言葉にスリープは困惑した表情になる。
そんな奴に俺は多分、これ以上ないほどの良い笑顔をしていると思う。

「ありったけの金目の物を出せ、悪党さん」

スリープだけ一瞬時間が止まる。
「な、ちょ、おま・・・」
「この世で一番悪いのは自分みたいなお尋ね者や盗賊だとでも思っていたのか?」
俺は言葉を続けていく。
「違うんだよ。この世で一番あくどい奴は【正義】を語る奴なんだよ。だってそうだろ?」
「な、なにを・・・」
「正義さえ語ってしまえば、悪い奴等に何したって文句を言われない。殺そうが金品奪おうが文句なんて出てこない」
みるみるスリープの顔が青ざめていく。
どうやら俺が言いたい事を分かってきたらしい。
更に砂月達に聞こえないよう、気付かれないように話を進める。
「だから俺は正義なんて語らない。が、金は好きだし、別に悪党には何したって良いよな?こんな風に・・・」
俺は片足を振り上げ、真下に落としていく。
スリープの悲痛な叫び声が山の中に響いていった。






俺の脚はスリープの顔の横の地面を踏んだだけだった。








「伊佐那!?今の声、スリープの?何かあったの!?」
「ん~・・・なんか白昼夢を見たらしいぞ?今は気絶しているから安心しろ」
砂月とルリリを心配させないよう、慣れないがなるべく優しい声で言う。
何とか誤魔化す事ができたみたいだ。天然、万歳だな。
「さぁ、お兄ちゃんのところに帰ろう!」
「は、はい!」
砂月の言葉にルリリは嬉しそうな顔をする。
本当に良かったな、ルリリ。



シバコイルとか言う警官のおっさんが来ていた。
マリルの通報のおかげで思ったより早く来てくれたらしい。
「オタズネモノタイホ、ゴキョウリョクカンシャシマス。ショウキンハギルドニオクリマシタ・・・サァ、クルンダ!!」
「ちぇっ・・・お宝・・・」
スリープ、悪い奴だが少しは同情できるぞ。
そうだよな、目の前にあるお宝が取れないのはショックだよな、うん。
とにかくシバコイルによりスリープは務所に連れて行かれた。
「賞金かぁ・・・そういえばスリープお尋ね者だったんだっけ?」
「どうした急に?」
砂月が今気付いたような言葉に俺が疑問を投げる。
「いや・・・ルリリを助けるのに必死で・・・お宝とか賞金の事忘れてたんだ。どうせならトゲトゲ山のお宝欲しかったね」
そう言って少し残念がる砂月。

うん、すまん。実は何気に俺は転がっていた金目の物はちゃっかり拾っていた。

秘密にしててもしょうがないから・・・ちゃんとばらすか。
「え!?うわ、凄いよ伊佐那!!やっぱり伊佐那ってしっかりしてるね!!」
「凄いです伊佐那さん!!僕、尊敬します!!」
まさかの賞賛と尊敬の瞳。
しかも砂月だけでなくルリリまで。
凄い罪悪感が俺の胸を襲う。なんか土下座したくなってくる。
そこへマリルが泣きながら走ってきた。
「ルリリ~!!」
「お、兄いちゃ~ン!!」
マリルに気付いたルリリも泣き始め、マリルの胸へと飛んでいく。
「大丈夫か!?怪我は?どこか痛い所はないか!?」
「うわ~ん、怖かったよ~!!」
二匹して泣いて顔をグチャグチャにしている。
そんな二匹に砂月は取り出したハンカチで顔を拭いている。
「大丈夫、どこにも怪我ないよ」
「本当に!?良かったよ~、ルリリ~!!」
せっかくハンカチで拭いてもらった顔を、また涙で濡らすマリル。
兄と言ってもまだ子供だな。なんとも微笑ましい光景だ。

「マリル、お前の弟は偉いぞ?怖くても相手の脅しを撥ね付けたんだからな」

俺がそう言えばマリルは驚いたような顔をして、ルリリを見る。
ルリリはまだマリルの胸で泣いている。
「ルリリが?・・・ルリリ、一つ余分に貰ったリンゴはお前が食べていいぞ?」
「え?でもあれは二匹で食べるって・・・」
「いいんだ。今日の事、お母さんに話したらきっと喜ぶよ!」
「え?え?・・・でもやっぱリンゴは二匹で食べよう!二匹で食べた方が美味しいもん!!」
そう言って笑い合う兄弟に、自然と笑みがこぼれる。
珍しく引きつったような笑顔ではない事に俺自身が驚いた。
「やっぱ伊佐那って、励ましとか上手いよね!」
砂月の言葉に俺は更に驚いた。
いや、全然上手くないし棒読みも少し入っている気がする様な。

「私もいつも伊佐那に勇気付けられちゃう。今日も伊佐那がスリープに先手打たなかったら、私動けなかったと思うの」

先手と言うより不意打ちの方が正しいんだが・・・それは言わなくていいか。
何て言うか不思議なんだよな、砂月の傍にいるって。
微妙にずれている会話さえたまに心地良い。
あんまり感じた事ない気持ちかもしれないな、こういうの。
昔からずっと一緒にいたような感覚な気がする。
思わず自分でもおかしい言葉を口に出す。










「俺と砂月って昔会ったことあるのかもな」






残念ながら、砂月は聞こえなかったらしくマリル兄弟と手を繋いで歩いてる。
俺は一人寂しく、その後ろを歩く事にした。
子供って得すぎるだろ、チクショウ!



バックの容量も増え、賞金まで貰えると思うと俺はなんとも言えない笑顔を顔に貼り付ける。
キマワリ姐さん曰く、伊佐那ったらそんな笑顔もできるなんて器用すぎますわよきゃー、らしい。
「シバコイル保安官から今回の賞金を頂いた!よくやったぞ、お前ら!!なわけで、これが今回の報酬だ♪」
渡されたのは賞金の3000・・・の十分の一の300だった。





「ざけんなぁ、鳥ぃ!!!焼いて親方に食わせんぞ、ごるぁ!!」

「おだまり!!コレが修行というものだ、新入り!!!」


俺が攻撃を仕掛ける前にぺラップのハリセンの方が早かった。
文句を言おうとした砂月は、そのハリセン技を見て口を手で押さえている。
キマワリ姐さんやビッパはそんな俺達のやり取りを苦笑しながら見ている。
これ、恒例になりそうだ。


「ルリリを助けられて良かったよ。これも全部伊佐那のおかげだね!」
話を変えようと砂月が俺にそう言う。
俺はその言葉に頭に疑問符を浮かべる。
「だって伊佐那が夢で見てくれたから、ルリリの危険も早く分かったでしょ?」
砂月の言葉に俺は思い出す。
あの奇妙な出来事が本当になってしまった事を。
(俺は予知夢的なものを見る事が出来るのか・・・?)
珍しく真剣に考えてる所になんとも間抜けな腹の音が聞こえてきた。
思考が中断された事を起ころうとして、振り向いたら砂月が腹を押さえてた。
「あはは!お腹の虫が鳴いちゃったよ」
笑いながら言われ、怒る気がどんどんと失せていく。
すると俺の腹も同じ様に音がなる。
「俺も腹減ったなぁ・・・」
「ルリリ助けるのに必死だったもんね!今日の夕飯は何かなー♪」
笑って話しながら俺達は食堂の方へと向かった。
そしてまた、砂月の大食いに驚く事となった。
だからなんでその細い体に、俺よりも多い食材が収納できるんだ。



雷が鳴り響く嵐の夜になった。
海の近くだから波が荒れる音や、雲の移動が激しい。
外の音が煩くて上手く眠れない。
砂月も同じらしく、二匹で寝る前のお喋りをすることにした。
「凄い音だね・・・そういえば、伊佐那と出会う日の前夜も嵐だったな」
「へぇー、なんか縁でもあるのかかもな」
「ねぇ!何か思い出せないかな!?」
期待に満ちた声で砂月が俺に言う。
けど、俺は何も思い出せない。なんとなく自分の人間像は分かるくらいだ。
嵐の中でかぁ・・・そういえば、なんか誰かといたような・・・気がしないような、するような。
なんとも微妙に記憶が混乱している。

(でも砂月とは初めて会った気がしない・・・てか、こんなに若かっ・・・た・・・け?)

自分が砂月に抱いたイメージに混乱する。
今、なんで俺は砂月の事を若いとか感じているんだろうか。
「どう?」
「・・・駄目だ、やっぱ思い出せねぇや」
俺の言葉に砂月が、やっぱり難しいなぁと呟く。
あえて今の俺が思った事は口に出さない。
理由は色々あるが、建前として相手が女という事にしておこう。
「少しずつ思い出していこうね。・・・で、実は私一つの仮説を思い浮かんだの!」
砂月が目を輝かせて、いかにも話したいというような姿勢をとっている。
俺は先を促して、砂月の言葉を待つ。


「伊佐那が見た夢ってさ・・・伊佐那自身になんか関わりがあるんじゃないかな?」


砂月の言葉に俺は目を丸くする。
そんな風に考えた事がないからだ。
「だって未来を見るヒノアラシなんて聞いた事ないし、人間がポケモンになったのも聞いた事ないし」
そりゃそうだ、と俺も納得する。
普通にそんなのがいたら色々とうるさい奴が出てきそうだしな。
「だからその二つが大きく関ってると思うんだ・・・あくまで仮説だけどね」
悪戯をした時のようなお茶目な笑顔で砂月が言う。
俺にはとても真似できない無邪気な顔である。
(記憶を辿る鍵・・・になるのか?一応)
止め処もないことを考えて、天井を眺める。
まだ空の雷や波の音が煩い。
しかも、さっきよりも激しく声が聞き取り辛いくらいだ。


「私、伊佐那の人間の時の事を知らないけど・・・良い人間だと思うんだぁ」


どんなに煩い音でも、その言葉を俺から消す事はなかった。
何か目頭が少し熱い気がする。気のせいだと思っとこう。
「だって伊佐那のおかげで悪い奴を倒せたもん」
その言葉に俺はある事を思い出す。
ぺラップが言っていた、最近悪い奴が増えているとか言うことだ。
それの原因には時が狂ったとか言っていたような気がする。
「なんで時が狂っているんだ?」
俺の言葉に砂月は知っている事を教えてくれた。
「狂い始めている原因は皆が言うには・・・【時の歯車】が関係してるって」
「時の・・・歯車?」
何か聞いた事あるような・・・ないような。
なんとも言えない感覚が俺の中に溜まる。
「世界の色んな所・・・森や鍾乳洞とか、そういう場所の中央にあるらしいの。それのおかげで時間は守られているって聞いた事がある」
とても・・・値打ち物の匂いがする。
だが、聞く限りじゃ持ち出せるような物ではないな。
「じゃあ、それがなくなったら?」
「え!?う~ん・・・多分、その地域一帯の時間が・・・止まるのかも。誰も触った事ないらしいから分かんないや」
「探検隊としては心くすぐられる、良いお宝の気がするんだがなぁ」
「あはは!でも、時間って大切な物だから取れないね」
二匹して笑い合い、また少し談笑した後に眠りに入る。
こんな少しだけスリルのある平和な日々が続けば良いのに、とらしくない事を俺は思った。
でも、なんでらしくないなんだろうという記憶は思い出す事はなかった。




あるジャングルの中、鬱蒼とした緑の間を走る影が一つ。
それは雷光に照らされ、一瞬姿を現す。
だが、またすぐに緑の中へと姿を消す。
ジャングルの中央の祭壇にある歯車の形をした遺物。
それこそが時の歯車と言われる物だった。
その歯車に先程走っていた影が近付く。
「初めて見た・・・これがそうなのか」
近付き、歯車から照らされる光で淡く影の正体が浮かび上がる。
淡い青緑の光は優しいようで、どこか冷たい雰囲気をもたらす。
まるで触れるなと言わんばかりの神聖な輝きを持っている。


「ついに見つけた・・・時の歯車!!」


そして急いで歯車を手に取ると、驚くべき速さでその場を影は去っていく。
歯車があった祭壇からとんでもない速さでジャングルに変化が訪れる。
嵐の風で動いていた木々や葉が石の様に固まっていく。
風の音は止み、葉から落ちる水滴が空中で球体の形のまま止まる。
その地全ての物が動きを止め、進まなくなる。

恐ろしいこの現象こそが【時が止まる】という事だった。

空も動かない不気味な光景であった。
球形のドームで守られるようにジャングルは動きを止めた。
全てが拒絶され、ジャングルは墓場のように静かになった。
この世の終りと言うものがあれば、誰もがこの場所がそうだというだろう。

「まずは一つ目か・・・待っていろ、伊佐那、波音!!」

決意するように影は手にある歯車を握り締め、駆けていく。






それが起きている頃、俺は夢の中で美女に囲まれているを夢を見てご満悦だった。



何事もなかったように俺は起きた。
いつも通りの朝礼をし、掲示板を見に行く。
色んな奴から助言やルリリを助けた事への賞賛、最近の異変を聞く。
ある程度買い物をした後はコッソリとキマワリ姐さん等の日記を砂月と一緒に見る。
そして依頼に書かれた任務地へと行く。
もちろんしっかりと転がっているお宝は頂いていく。
帰ったらぺラップと報酬で言い合い、ハリセンを食らう。
夕飯を食べ、そして砂月と共に眠りに付く。
なんとも平和な日々だ。


でも、やっぱり俺の記憶は戻らずにいた。






あとがき
伏線的な何かが入り始めました。
俺ワールド全開ですよ!そしてスリープご愁傷様☆
いや、結構好きですよ、一応は。
てか、主人公性格最悪なのに砂月より弱いって・・・
砂月の方が男前ですよ、うん。
そんな感じで進めていこうと思っているデスヨ(どっかの国のモノマネ)
頑張りますですよw






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▼無題
初めまして!!ユキと申しますっ!
小説勝手に読ませていただきました(←
とても面白かったですっっ!!
特に伊佐那の行動とか趣向回路に吹きましたw

次回作も楽しみにしてます!!
ユキ URL 2009/09/22(Tue)【15:28】 編集
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